今日はピッカーについてのちょっと真面目なお話です。

コーヒーに関わる人々にとってのピッカーとは、農園でコーヒーの実を摘み取る収穫人のことを指します。

スペシャルティ―コーヒーを生産するにあたり、このピッカーの仕事はかなり重要な役割を果たしています。

大量生産のコーヒーとは違い、人の手で一粒一粒摘み取っていく作業は今のところAIには代われないのです。

いまだに人の手で行わなければならない難しさはいくつか理由があります。

まず、標高の高い所で採れるスペシャルティコーヒーのコーヒーチェリーは山の斜面に位置しており、中にはかなりの急斜面になることもあります。

また、収穫に適した熟度も人の目で判断し、色で判別しているので未熟も過熟も避けなければなりません。

1本の木でも数か月の間に約4回に分けて収穫をし、チェリーの熟度を揃えていきます。

私たちも産地訪問時に収穫体験をさせていただきましたが、収穫スピードでいうとプロピッカーの方が10倍は早いですし、精度もレベルが違い驚きました。

 さて、今まさに収穫時期なのですが、この時期は季節労働者でもあるピッカー(収穫作業員)であちこちの農園が溢れます。

個人や家族で移動している場合もあれば、小さな村の住民ごと移動して稼ぐ場合もあります。最近は収穫よりも楽で高額な仕事が増え始め、アメリカへ出稼ぎに出た方が世帯収入が増えるといったことから、ピッカー達の確保が難しくなってきています。

少しでも稼ぎたいピッカーはどこの農園はいくら払ってくれると値段交渉をし、条件の良い農園で働きます。

給料だけではなく、食事や寝床などの福利厚生も比較対象になりますから、生産者としてはコーヒーの生産を始める段階から出費がこれまで以上にかかっています。

ある程度摘み取ったチェリーは80-100kgある袋を山の麓まで運び、重さを計ります。その重さによって収入が決まるわけです。スペシャルティコーヒーを作る上では、完熟したチェリーのみを収穫するようにピッカーに指示または教育している為、緑色の未熟豆などを含めてはいけません。

その分多くの量を摘み取らなければ収入に響くため、ピッカーはその分単価アップを生産者に要求します。

生産者としては摘み取ってもらわないと困りますし、放っておけば商品になりませんし、単価アップに従わなければ他の生産者の元にピッカーたちが流れていってしまうかもしれません。

ピッカーにしてみれば、ここ時期に出来るだけ稼ぐことが家計維持には必要具不可欠ですから、妥協するわけにはいきません。

なかなかシビアな世界です。

 

農園主とってみれば質の良いピッカーを揃えることは容易ではありません。

農園を経営する上でピッカーの存在がどれだけ影響を与え、スペシャルティコーヒー生産国ではこういった現状があることを消費国側でも知ると、また見方が変わります。