二月二十日までの二週間、毎年恒例のニカラグアとエルサルバドルのコーヒー農園を巡る旅 に出ていました。 もう取引する農家は決まっていて、毎年同じ農家の方々から購入して いるのですが、ニカラグアの生産者達とは十一年目、エルサルバドルの生産者とは十年目という一つの節目の年となりました。

今回の買付けの旅を通じて発見したのは、生産者全員が消費者であるお客様に一杯の コーヒーの裏側にあるストーリーを知って欲しいと願っていること、そして我々ロースターとの長期にわたる関係の維持をしたいと願っていることです。 これまでも同様の話は生産者としてきているのですが、今回は相手側から積極的にこうし た話をしてくれました。

そして長年にわたって取引してくれて有難うと何度もお礼を言われたのが印象的でした。 「こちらこそ、あなた方がいなくては商売にもなりませんし、おかげ様でお客様に大変喜んでもらっています。感謝の気持ちでいっぱいです。」と伝えますと、こう言われました。 「十年前会った時は、単発の取引きかと思い、疑心暗鬼だったけど、毎年こうやって来てく れ、農園の中まで足を踏み入れてくれる。 しまいには家族とも打ち解けるようになり、 お互いがビジネスパートナーとしてはもちろん、信頼できる友達のように感じています。」 胸にじーんとくる嬉しいコメントでした。

そして彼らが本腰で美味しいコーヒーを作ろう と試行錯誤を続けられたのも、必ず毎年買付けてくれるという信頼があったからだそうで、だからこそ彼らは毎年コーヒーの品質を上げてきているのだと感じます。 コーヒーは手を掛けずとも実はなります。 しかし、美味しいコーヒーとなると、従来のやり方が通用しません。

偶然その年だけ美味しいコーヒーができる時もあるかもしれませ んが、稀ですし、継続性がありません。 農園主も、そしてそこで働く労働者のみんなが、 やっている作業ひとつひとつを理解し、適正なタイミングで確実に実行していくストイックさ も大事になってきます。 またその分、手間がかかる =(イコール)労働者への賃金アップや、労働者数の増員も必要となり、同じ量を作るにしても、費用が大幅に増加します。

ニカラグアやエルサルバドルでは、ここ数年の間にコーヒーの木に降りかかる病気や菌類、 バクテリアや異常気象の影響などで多くの生産者が農園を手放しています。 それらに対抗するべくオーガニック系の薬を撒いたり、コーヒーの木そのものの活力をアップさせる試み も行われていますが、それにも費用が莫大にかかります。 資金がない農家は荒れ果てていくばかりの、見るも無残なコーヒー農園を仕方なく後にするわけです。

ミルトンが取引している生産者達が、このような状況下でも続けていけるのは、買付けの単価が高い事にあります。 それがなければ手を加えたくても費用を賄えません。 お互いの長期にわたるビジネスのためにも、そして支えてくださるお客様のためにも、 我々が人としての良心にそった正しいと思うことを引き続き行っていきます。