5月に行われたニカラグアのカップオブエクセレンス(以下COE)。
今年からCOEは”ウォッシュド処理”と”その他の処理方法”で部門が分けられるようなったのですが、その2つともの部門で私たちが買付けをしている農家さんが1位を獲得しました!

そのどちらもゲイシャ種だったので、今日は改めてゲイシャ種についてまとめてみようと思います。
ゲイシャ種についての記事は世の中にたくさんあるので、詳しい方にとっては今更感もあるかもしれませんが…
お客様から「なんでゲイシャ種って値段が高いの!?」と質問をいただくことも多いので、この記事が少しでもお役に立てると嬉しいです。
(以前、SCAJ(日本国内のスペシャルティーコーヒー最大級の展示会)に行った際、20gで2万円の豆を見かけたときには本当に驚きました…!)

☕ ゲイシャ種ってなに?
今でこそ“高級コーヒー”の代名詞になっているゲイシャ種ですが、その最大の特徴は、一口目から感じられるジャスミンなどのフローラル系の香り。
その香りの華やかさから、紅茶好きの方からも好評です。
さらに、冷めてくると香りが優しい甘みに移り変わっていくのもゲイシャ種ならではの魅力です。
🌍 名前の由来とルーツ
「ゲイシャ」という名前から「日本と関係があるの?」と聞かれることも多いのですが、
実はエチオピア南西部のゲシャ村(Gesha Village)が名前の由来です。
そこから1930年代、病気に強い品種の研究目的で種が収集され、
ケニアやタンザニアなどアフリカの研究機関を経て、やがて中米へと渡りました。
ゲイシャが注目を集めるようになるのは、もう少し先のことです。
🌿 風味が評価されなかった時代
当時のゲイシャは「病気に強そうな品種」として期待されていた一方で、
- 実の付き方が不安定
- 栽培に手間がかかる
- 風味の評価が高くなかった(1※、2※)
などの理由で、主力品種にはなりませんでした。
1※今では浅煎り〜中煎りで香りを引き出す焙煎が主流ですが、
当時(100年前)は浅煎りそのものがあまり一般的でなかったため、
ゲイシャ本来の魅力が知られなかったのでは。
2※後述しますが、この時代よりも後に遺伝子が自然界で変異し、香りの華やかな品種が誕生したという説もあります
🌟 ゲイシャが世界を驚かせた瞬間
転機となったのは2004年。
パナマのある有名な農園で、区画ごとに収穫・カッピング(風味評価)を行っていたところ、
ある区画の豆だけが驚くほど個性的な香りを放っていたのです。
そのロットは国際コンテストで高評価を受け、一気に世界中から注目されることに。
これが、現在の「ゲイシャブーム」の始まりです。
今でこそ、ゲイシャ種の他にも香りの華やかなコーヒーは作られていますが、いわゆる”サードウェーブコーヒー”という言葉がまだ使われ始めて間もなかった当時からすると「これって本当にコーヒーなの!?」と衝撃だったのでしょう。
🧬 ゲイシャにもいろいろ?遺伝子から見る
近年の遺伝子解析によって、「ゲイシャ種」と呼ばれるコーヒーの中にも
さまざまな系統があることがわかってきました。
解析の結果、約60%近くはこの有名農園で最初に評価された系統とは異なる遺伝的背景を持っていたことが確認されています。
つまり、すべての「ゲイシャ」が同じ香り・風味を持つわけではない、ということです。
もしかすると、この農園で偶然発見された風味豊かなゲイシャは、
パナマという土地で独自の進化を遂げた、特別な存在だったのかもしれません。
🏆 ミルトンで扱うリマさんのゲイシャ
冒頭で紹介したリマさんのゲイシャ種。
実はこの品種、パナマで最も有名なゲイシャ栽培農園から株分けされたもので、遺伝子的にも完全に一致しています。
(現在は販売していませんが、ルイスさんのラ・ベンディシオン農園のゲイシャ種も
同じく、その有名農園から株分けしてもらったものです)
20年近くお付き合いのある信頼する生産者さんたちが、
それぞれの土地(テロワール)で同じ品種を育て、異なる個性を持ったコーヒーとして私たちのもとに届く。
それを扱えるのは本当に嬉しく、スタッフとしても「胸が熱くなる」ようなストーリーです。

🥇 リマさんの快挙と、いまの味わい
リマさんはゲイシャ種を育てはじめてわずか3年目で、エルサルバドルのコンテスト「カップ・オブ・エクセレンス(COE)」で3位を受賞(2021年)。
しかも、コーヒー本来の風味がダイレクトに出る「ウォッシュド処理」での受賞でした。
通常コーヒーの木は、安定した収穫までに3〜5年かかると言われる中、これは異例。
ゲイシャという品種のポテンシャルと、リマさんの持つ農園の土壌や気候との相性がとても良かった証です。

その後、リマさんは出品をお休みしていますが、オーナーは産地訪問のたびに
「今年もまた、ゲイシャが美味しくなっていた!」と嬉しそうに報告してくれます。
このコーヒーは年々進化を続けているのです。
☕ 今年の味わいは…
ミルトンコーヒーではこのゲイシャ種を4年連続で買付・販売しています。
毎年少しずつ変化する味わいをお客様と一緒に楽しめるのは、私たちの大きな喜びです。
とくに現在販売中のウォッシュド処理のロットは、
「これぞゲイシャ!」と思わせるフローラルな香りと、リマさんのコーヒーが持つ甘みのバランスがとても魅力的。
しっかりした甘さがあるからこそ、冷めるほどに花のような香りが引き立って、さらに美味しく感じられます。

✍ おわりに
ゲイシャ種の話だけで、すっかり長くなってしまいました。
他の品種や選び方のヒントについても、またの機会に綴ろうと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
ぜひ、リマさんのゲイシャ種を「特別な日の、特別な一杯」として味わっていただけたら嬉しいです♪
ご自宅用はもちろん、お試しや、ギフトにもぴったりです。