新聞やテレビ等の取材で度々、「何に最も力を注いでいますか?」という質問があります。 「正直な私の答えは、「仕事に関わる全て」となるわけですが、それでは取材も一日では終わらないので、「日本にいる時の仕事の中では、美味しさを追求するのに最も力を注いでい るのは、焙煎です。」と答えます。 コーヒー豆の販売をメインに営むコーヒー屋は、どこも焙煎に力を入れているのは間違いな いでしょう。
コーヒー豆にしか力を注ぐものがないわけですから、そこを手抜きするということは、もはや趣味の世界とお客様から思われても仕方ありません。 焙煎は私にとって楽しくも苦痛であり、味を決定づける最大の化学変化でもあります。
ミルトンのように生産者の方々から直接買付けをすると、彼らが費やしてきた努力と 大変さを知ることになります。 彼らの労力を肌で感じ、感謝の気持ちが湧いてくると 彼らの努力を無駄にしてはいけない!美味しさを伝えなくては!といった責任感が生まれ ます。 私はこの責任をとても大切にしていまして、本来の風味を出しきれていない焙煎豆を販売 するということは、生産者の意に反するものと考えているわけです。 美味しく焼かないと 生産者ががっかりし、それが消費者に美味しくないコーヒーとして認識されてしまうと取り返しのつかない事態を生みます。
生産者達を大切にしたいからこそ、焙煎は大事なの です。 コーヒー焙煎によって風味を最大限に出し、妥協しないコーヒー豆を販売し続けていると、 お客様が美味しい時に感じる反応が、とても分かりやすくお店側に伝わってきます。
そしてお友達にもご紹介してくださり、お祝い事やプレゼントなどにも使ってくださいま す。 何年も妥協せず続けていると、見てくださる方は見てくださっていると感じます。 応援もしてくださいます。 一生懸命さが、スタッフを通じて、そして美味しいコーヒーを通じて、お客様に伝わり、よりコーヒーが美味しく感じるのだと信じています。
妥協して販売したコーヒーは、舌の肥えたお客様にはすぐに伝わります。 それが続けば ファンはいなくなってしまいます。 お客様をがっかりさせないためにも、一生懸命に働いて くれるスタッフ達のためにも、そして店の存続の為にも、焙煎は非常に重要な仕事なので す。 美味しく焼ける度に喜びがあり、少しでも納得できないと苦痛になり、の繰り返し。 その域に達するように、私に代わって焙煎をしているスタッフに指導している最中です。