30歳で起業した私も、気がつけば早50歳を迎えました。

振り返ると、人生の節目節目で様々な出来事があったことを思い出します。結婚、子育て、事業の拡大、そして時には挫折や困難もありました。これらの経験を経て、今、私は新たな挑戦に直面しています。これから先の20年、つまり70歳までの人生をどのように歩んでいくべきか、真剣に考えるようになりました。

子供も成長し、既にティーンエイジャーです。彼は日に日に自立心を強め、遅かれ早かれ私の手を離れていくでしょう。親としての役割が変化していく中で、私の人生においてもう一つ重要な柱となっているのが、20年間続けてきた今の事業です。

思い返せば、全くの素人として、何も知らないまま事業をスタートさせました。

右も左もわからない状態からのスタートでしたが、有り難いことに、今日まで事業を継続することができました。「月並み」という言葉では表現しきれないほど、内容の濃い、あっという間の20年間でした。

振り返れば、私自身にも反省すべき点がたくさんありました。若気の至りとも言えるでしょうか、先のことを十分に考えずにとった無鉄砲な行動や、不適切な発言をしてしまったこともありました。しかし、そのような失敗や過ちの一つ一つが、貴重な学びの機会となり、今の私を形作っているのだと実感しています。

もっと遡り、10代の頃から今日に至るまでを振り返ると、まさに波瀾万丈な人生を送ってきたと言えます。波乱万丈が良いことなのか悪いことなのかは、人それぞれの価値観によって異なるでしょう。しかし、少なくとも私の人生において、良くも悪くも刺激の多い日々だったことは間違いありませんが、冒険心と好奇心は歳を重ねても持って行きたいと思っています。

というのも、年齢を重ねるにつれて、冒険心が薄れていくという話をよく耳にします。実際、私自身もそれを実感しています。しかし、正確に言えば、冒険ができなくなるのではなく、冒険が面倒くさくなるのだと感じています。20代、30代の頃の自分と比べると、明らかに保守的になっていることを自覚しています。歳を取ると、簡単なことでさえ面倒に感じてしまうのはこれまでは理解出来ませんでしたが、今はわかります。

これまで悔いのない人生を送ってきたからこそ、これからも同じように悔いのない人生を全うしたいという思いが強くあります。

そのため、自分を奮い立たせる意味も込めて、これからも冒険するためにも、以前から目標としていた「50歳までにミルトンコーヒーロースタリーの旗艦店を造る」という計画を進めています。残念ながら既に50歳を迎えてしまいましたが、1年遅れでも必ず達成させたいと考えています。

この旗艦店が実現可能だと確信できるのは、何よりも長く勤めてくれている人材が安定してきたことが大きな要因です。特に、核となる人材がしっかりと育ってきたことが、現在の当社の最大の財産であり強みとなっています。小売サービス業において、スタッフの存在は極めて重要です。いくら美味しいコーヒーを提供できたとしても、接客が良くなければ、その価値は半減してしまいます。

現代では、気持ちの良い接客がスタンダードになっています。世界中どこに行っても感じることですが、日本でも、親しみやすい居酒屋から高級レストランまで、価格に見合った満足のいくサービスが提供されています。時にはアジアのレストランなどのサービス業の方がレベルが高いようにも感じる時が多くなりました。

料理の美味しさは当たり前の時代となった今、実際にお客様と接するスタッフの対応が非常に重要です。ロボットのような一辺倒な対応ではなく、人間味のある気持ちの良い接客が求められています。今後、この点においてサービス業界は二極化していくと予想しています。

どちらの方向性を選択するかは、それぞれの経営者の考え方によって異なるでしょう。しかし、少なくとも我々の商品は、これまでもお客様のレベルアップしていく味覚レベルに応えてきましたし、間違いなく嗅覚と味覚に直接訴えかける、価値ある商品です。ごまかしの効かない、誰が飲んでもわかりやすいほど美味しいコーヒーだけを厳選して輸入し焙煎しています。

この価値あるコーヒーを、関心を持ってくださるお客様に確実に届けるために、製造から販売に至るまで、全てのスタッフにプロ意識を持って取り組んでもらいたいと願い、今も一体となって取り組んでいます。

これからの20年、さらなる成長と挑戦を続けながら、お客様に喜んでいただける商品とサービスを提供し続けていきたいと考えています。年齢を重ねても、常に新しいことにチャレンジする姿勢を忘れずに、スタッフと共に歩んでいく所存です。50歳を迎えた今、これまでの経験を活かしつつ、新たな目標に向かって邁進していきたいと思います。