日本でもコーヒー作り(農業としてコーヒーの樹を育て、コーヒーチェリーを収穫している)が行なわれていますが、一部を除いた大部分の日本国土ではコーヒー栽培に適していないため、今のところコーヒー生豆はやはり、その殆どが輸入品となっています。
逆に生産国からすると「輸出品」となり、外貨を稼ぐ大切な商材ですので品質の良いものは高値で売れる国へと流れていきます。
では、自分たちが作ったものを良いものは自分たちの口に入りにくいのでしょうか?
私(一社員)が始めて産地訪問させてもらったのは約10年前。
ミルトンとしてもまだ創業10年未満の時期でした。当時は、トップレベル(ハイスコア)=スペシャルティコーヒー品質のものは全て海外のバイヤーが買取り、ハイコマーシャル・コマーシャルレベルのものもある程度のお金になるため、処理過程で弾かれた行き場のない欠点豆などを掻き集めたものが国内消費用として流通していると現地の方が言われていました。(※ミルトンはスペシャルティコーヒーの買付の為、そこでの選別の話です)
では、現在はどうなのでしょうか。10年も経てば、コーヒーの質や各国の景気動向、消費量など大きく変わってくるはずです。
昨年7月より、オーナーがコロンビア・ニカラグア・エルサルバドルへと買付に行ってきましたが、やはり変化してきてるようです。
これまでは消費国側で発展してきたカフェやロースター文化ですが、今では生産国側でも自国のスペシャルティコーヒーを扱う事が当たり前となりつつあります。
その時に訪れたトロピカリアというロースタリーカフェは雰囲気も良し、食事も良し、何よりコーヒーが美味しいことに驚いたそう。
そして、コロンビアではお邪魔したCoE受賞農園のブルボンロサドのマイクロロットをカップさせて頂きましたが、焙煎がとにかく上手!というかほぼ完璧。スペシャルティでありがちなアンダー気味は全くなく、冷めてくると気持ちいいぐらいクリーンさが際立ってくるという印象です。
それでも焙煎しているホセさんは更に美味しくしたいと熱心に焙煎の話をしてくれる。エスプレッソ用とドリップ用と販売用と3パターン同じ豆を焼き分けるところまで行っているのは消費国と全く同じ認識です。しかもこのハイレベルのコーヒーを飲み慣れた消費者はもう元のコーヒーに戻らないのは消費国側でも同じですから、今後自国消費は増えるでしょう。
むしろ、ここのように鮮度抜群のニュークロップを完璧に近い形でお客さんに提供してるあたり、消費国側では難しいですし、生産国ならではの農園や品種などの情報の得やすさもあります。地産地消です。輸入トラブルもなければ為替変動もありません。日本のロースターからしたら羨ましい環境です。
それでもミルトンが直接買い付けを始めた20年近く前は、生産者さんはカッピング(味の評価のためのテイスティングスキル)をほぼ持っておらず、とりあえず「作っては売る」という繰り返しだったのだそう。
それが、量が減ったとしても品質を上げれば売り上げも上がり生活は向上する。これからは品質重視のスペシャルティが増えていくから切り替えた方が経営的にメリットが大きいと思考を切り替える農園主さんが増えていきました。
その為には自分で味を知り、方法を知らなければなりませんので自然と自国で味を評価するスキルを持つ人が増えるほど全体のレベルが上がり、結果的に自国でも美味しいコーヒーに対する需要が伸びたのかも知れません。
改めて日本を見てみると、色んな要因でコーヒーの価格が爆上がりの今、ここで品質を落とす事は追々致命傷になるだろうなと感じざるを得ません。ここ最近は、具合悪くなるぐらいの高騰ぶりですので、円安も相まって多くのロースターにとってはなかなかの踏ん張り時です。
少なくとも消費国側で出来ることは、月並みですが良い品質をこのまま取り扱い、安売りせず、お客様に価格以上の価値を提供することではないでしょうか。もうどこをどう探しても安くて高品質なスペシャルティコーヒーは難しいのですから。