とっても地味なコーヒー農園の地面の写真ですが、状況がとても分かりやすい写真ですのでご紹介します。

 

左半分は除草剤を使っている生産者の土地で、草が黄色くなっています。そのうち茶色になって枯れていきます。
右半分が薬品に頼らずmachete(マチェーテ)という鉈を使って人海戦術で雑草を刈っている生産者の土地です。

ミルトンでで取引きのある生産者は全員この後者の土地にあたります。

お察しの通り除草剤の散布は簡単に行えますし、短期間で終えれるので人件費削減がメリットと考えられますが、与えるダメージは雑草だけでなく土壌のバクテリアや土地に必要な植物にまで影響を与えます。

コーヒーの木に何も影響が無いとは言い切れないでしょう。

右側の土地の生産者は人件費は一見嵩むように感じますが刈り取った草はそのまま有機肥料となり、微生物の繁殖にも貢献し、土壌が柔らかくなり、コーヒーの根も張りやすくなるなど、メリットがとても大きいのです。

手作業の草刈りをするには広大な農園なので作業が大変ですが、長い目ででみた時には土地が痩せていく除草剤はデメリットが勝り、サステイナブルではありません。

そんな話当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、意外とその簡便性から除草剤を使う生産者は少なくはありません。
こうした地味で細かいところも我々は確認しながら買付けを行なっています。

農園同士の境界線が柵で仕切られているケースばかりではなく、ぱっと見では写真のように境目がわかりにくいのですが、地面を見てみると明らかに土壌の様子が異なるので、そこが境界線だと分かります。

小ネタですが、実は実際の費用を長期間で統計で取ってみるとmacheteで人件費をかけて草を刈った方が最終的には除草剤よりも思った安上がりだという話を実際に聞きました。

正にサステイナブル万歳です。

 

 

少し話が逸れますが、一言で農薬と言っても除草剤・殺虫剤・殺菌剤の総称を「農薬」と呼びます。

そしてこれが厄介な誤解を生んでいるのも事実です。

コーヒーづくりにおいては無農薬は実現できても化学肥料不使用というのはかなり現実的ではありません。

化学肥料が悪というイメージも広がっているようですが、実際は人体や環境に悪い影響はありません。

20年近く農園をまわりながら買い付けをしてきていますが、無農薬は可能でも化学肥料不使用はかなり難しく、現実的に持続可能ではないことが分かりました。

私どもも当初は気にしていましたが、気にしないといけない物質と、気にしなくてもよい物質に分けて考える必要があります。

 気にしないといけないのは、殺虫殺菌剤と除草剤です。

特に除草剤は取引農園では自主的に禁止しています。

殺虫殺菌においては虫捕獲機や天然素材の銅などの散布を行い、被害を最小限に抑えてもらっています。

ほとんど気にしなくて良い物質は化学肥料ですが、その使用するタイミングと有機肥料とのバランスが大切です。

化学肥料は即効性はありますが使いすぎは土を痩せさせ、持続可能な農業に繋がりません。

そこで手間暇とコストのかかる有機肥料作りが出番として出てきますが、効果が見えるまで

最長数年かかるというデメリットも存在します。

 

そこでコーヒーの花の開花前にだけ、即効性のある化学肥料を与え均一な開花を促す生産者がほとんどです。

その物質が木そのものに蓄積されることはなく、ましてや我々の口に入ることはありません。

 

実際、エルサルバドルのリマさんも開花の時期にだけですが、開花を促進させるために化学肥料を利用しています。

逆をいえば、それら完全不使用のコーヒーを作るとなると、効率も悪くかなりコストが上がりますので、我々も従来の何倍も原価が上がり、消費者もコーヒー1杯あたり数千円ということになりかねませんから持続可能とは言えないかなと思っています。

 

最近は情報が蔓延した影響で、誤った知識や思い違いをしやすくなっているとは思うので私たちも色眼鏡で見るのではなく実際に現地へ赴き、自分の五感で正しいものを吸収し、ご提供できたらと思っています。

毎年念のために農薬等に関しては各生産者と農園内を回りながら確認しておりますので、安心してお飲み頂けます。

 

そして、コーヒーの害虫と言えばブロッカ、またの名をベリーボーラーと言います。

乾燥を好み、実の先端から侵入し、徐々に内部を食い荒らしていきます。
手遅れの場合は生豆に到達されてしまい、欠点豆の被害が拡大してしまいます。

早期の処置が要ですが、今年は例年になく雨ばかり降るので、ブロッカの被害が少ないようです。

(※ブロッカと降雨量との関係はかなり密接に繋がっています)

ブロッカのような害虫にとどまらず、菌が付着することで起こるサビ病も重大な問題の一つです。

こういった問題をその場しのぎで対処するのではなく、人体の影響や自然破壊・環境問題などを鑑みながらうまく対処していくことが持続可能な農業だと感じます。

 

参考までに、ミルトンで主に取り扱うコーヒーの情報としてこちらにしるしておきますね! 

【ニカラグア】

殺虫剤  不使用

除草剤  不使用

化学肥料 開花時期だけ使用

 

【エルサルバドル】

殺虫剤  不使用

除草剤  不使用

化学肥料 開花時期だけ使用

※エルサルバドルから購入している取扱い農園は全て活火山のエリアに位置します。

過去の噴火の影響で火山灰が堆積して酸性に傾いている為、より酸性に傾く化学肥料を物質的に与えることが出来ません。

また、標高が高く気温が低めのおかげで害虫が登ってこず、対策等もほとんど必要ありません。