スペシャルティコーヒーが本格的に広まって、生産国でも意識や流れが大きく変わったように感じます。

私たちが産地買付を始めた20年弱前、生産者さん達のほとんどが自分で作ったコーヒーは飲まない(正確に言うと味が取れない=カッピングスキルがない)ために、クオリティの判断が出来ず品評会やバイヤー任せだったところがありました。

自分でジャッジできないということは、コーヒー作りや処理などの生産過程における課題が見えず、改良もしにくいということです。

それがここ20-30年でスペシャルティコーヒーが飛躍的に広まったことに比例し、コマーシャルコーヒーでなくこの分野に農家として、ビジネスとしての可能性がおおいにあるということに気づき、動き始める生産者が増えました。

それには生豆の品質を上げていくことが必須であり、その為には自分たちが理解をしなければなりません。

今までのようにただ物理的に生産し、量で取引をする時代から質で評価され、取引をする方にシフトしていく農家さんが増えると同時にカッピングを学び、焙煎を学び、消費国と同じ土俵で語れなければフェアトレードは叶いません。

同じように私たち消費国側(バイヤー)も、産地を理解する必要があります。どういう条件や環境だとどういう味になり得るのか、取引する上での消費国との認識を擦り合わせることも大切です。農家さんは何年もかけて(時には何十年も)生産の計画を立てます。

一度植えてしまうと長い木で100年も生きるので、いつどのエリアにどの品種をどのくらい植えるのかをテロワールの相性を踏まえながら考えるのです。消費国側は、「この品種のこの処理を〇袋欲しい」などと簡単に言ってしまいそうですが、そんなシンプルな話ではありません。オーダーを受けてくれたところで、本当に輸出するまでは、それがきちんとした品質で商品(生豆)となるかは分からないからです。

さて、生産者の一人であるルビオさん(87点台でCOE1位受賞)は、ロースターでもあり、焙煎機をも自作するエンジニアでもあります。
オーナーが前回訪問時に、焙煎するところを見学させてもらったそうです。とても自作したとは思えない36キロバッチロースターで、今回受賞したロットのカーボニックマセレーションを焙煎。いつもはローカル市場用に焙煎しているそうですが、ニュークロップのしかもカーボニックマセレーションを焙煎する様子は慣れているな〜と感じさせるものがあったようです。しかも年間1コンテナ分を焙煎して販売しているのですから、スーパー生産者です。
自前のエアロプレスで飲んだところ焙煎もクリーンに焼けていて、風味のメリハリこそ弱いもののパパイヤやマンゴー、赤いリンゴにタマリンドを感じるしっかりとした風味がきちんと出ていたそう。

生産国で活躍するバリスタの方が選手権等で目立ちますが、ルビオさんのような器用な生産者もいると言うことも興味深いところです。

 また、Bella Aurora CoE 5位を獲得したルイス ホワキン ロボさんもカッピングに注力されており、産地訪問中も彼から直々に朝からカッピングのご招待。3代目となるルイスさんは16年前からカッピングの重要性を感じ、今ではIKAWAを使って自ら全てのロットごとで焙煎し、カッピングしています。

実際に5位のサンプルも用意してくれていて、なかなかの別格ぶりのマラカツーラ種のウォッシュドでした。余裕で89点は付きます。試しで作ってみたというナチュラルもカツーラ種でしたが、バランスの良さといい、豊かな丸みを帯びた質感といい、ナチュラルを作り始めて2年目とは思えない完成度に驚きです。

生産処理場でカッピングを用意したのは初めてだよと話してくれ、最後にはとても充実した有意義な時間だったと言ってくださり、こちらこそわざわざ全て用意して下さり感謝の気持ちでいっぱいです。

Four Barrel やCafe Ladró、CoavaやCarabelloなどアメリカのロースターをメインに出荷していますが、日本のスペシャルティのロースターにも卸し始めたいという事なので、日本のロースターの店舗に並ぶ日も近いかもしれませんね!

 

CoE4位のロスボルカンシートス農園のセルジオグティアレスさんはコーヒー農園だけでなく、これから自分が焙煎したコーヒーを使ったカフェも始めようとしています。こうした自分のコーヒーを焙煎したり、カフェで提供するスタイルはニカラグアではまだまだ新しい試みと言えますが急速に広がる予感がしています。

 

このように生産者自身が自分のコーヒーを適切に焙煎して、カッピングで正確な評価が出来ることは、その後の品質レベルアップにとても大きな影響を与えます。
先日農園に招待してくれたCOE受賞者達からの依頼で今回の訪問中、半日ほど焙煎のイロハとカッピングセッションを行い意見交換する機会を設けました。
異なる焙煎の温度帯の味の影響や、豆のポテンシャルを出す方法など、自分の舌で感じることが出来たことが収穫だったのではないかと思います。

こうした擦り合わせにより生産国側と消費国側のギャップが減り、取引においても本当にフェアで透明性のあるトレードが出来ると感じています。もちろん良い豆は日本にいながら手に入れることは出来ますが、現地と相違ない品質の善し悪しの判断基準を持ち合わせていることが前提にある気がしています。