お店でコーヒーを購入する際に、スペシャルティーコーヒーを扱うお店では特に、農園名や品種と同様に「処理方法」を明記してあることが殆どだと思います。
通販サイトでも同じく表記され、詳しい方はそれを豆選びの参考にされることも近年増えてきました。

それほどこの「処理方法」によって1杯のコーヒーとしての味わいが大きく変わるわけですが、もしかすると品種以上に処理方法は多岐にわたるかもしれません。

コーヒーの木(品種)は植えてから収穫までに最低でも3年はかかるので品種改良などもなかなか時間のかかることですが、処理方法に至っては少しづつ色んな方法が試せて、結果も出やすいので改良のスパンが短いのです。

さて、どのコーヒーも実から種子の状態にしないといけないので、何かしらの処理を施しますが、その最終過程で必ず乾燥を行います。

コーヒーを生産する上でどの工程も、場所(施設)が必要ですが、私たちが見てきた中ではこんな感じです。

農園→農家さんの所有土地(自身で管理)

処理場→農家さん所有または外部委託

乾燥場→農家さん所有または外部委託

輸出→ほぼ外部委託

いずれにしても費用やノウハウが必要ですので、自前なのか、委託なのか、は農家さんの事情や考え方によるところです。

さて、ニカラグアを始めとする中米ではBeneficio Secoと呼ばれる乾燥場があります。収穫後のチェリーやパーチメントを乾燥させ、輸出まで行う場所となります。ここが品質管理上とても重要な場所となります。

スペシャルティコーヒーにおいての乾燥場はに黒いメッシュで覆って直射日光を当てないようにアフリカンベッドで処理するか、中心部分に見える地べたに敷いた黒いメッシュ状の網の上で乾かされる光景をよく目にします。
よく見ると小さい区分けがされていますが、これはその一つ一つがロットとして細かく分けられ、タグをつけて管理しています。

一回毎の収穫分で分けている事が多く、トレーサビリティ(消費者がその食品の情報をいつでも辿れること)の為に細かく管理しています。
マイクロロットやナノロットと呼ばれるものは、この一個一個の事を指します。

マイクロロットやナノロットでできるコーヒーの生豆の量は30kgの袋で1袋から20袋程度といったところでしょうか。

ロット毎に次々と運ばれてくるコーヒーを乾燥管理しながらカッピングをしていき、カップスコアをつけながら評価をロット毎のタグとを結びつけます。

必要であれば後でブレンドすることもありますが、まずは細かく管理していく事が鉄則となります。


コマーシャルコーヒーエリアでは、コンクリートの上で、しかもロット毎に分ける事なくまとめて処理される様子が見られます。

手間暇かけるだけコストがアップしますので、低品質なコーヒーは大量消費用に回るイメージです。

自分の農園内に乾燥場を持たない生産者は多数いますが、そうした生産者達は乾燥を乾燥場業者に委託します。

収穫したチェリーをパルパーにかけてパーチメントの状態にしたら(ナチュラルの場合はチェリーのまま)すぐに乾燥場に運びます。

暑いと袋の中で輸送中に発酵してしまうので、予防のためにわざと夕方や夜の日が当たらない時間帯を選ぶ生産者もいます。

請け負った乾燥業者はロットごとに計量し、ロットごとに乾燥させていきますが、生産者としては追加の費用が発生しますし乾燥工程も自分の好きなようにできないことから、近年自分で乾燥工程までを行いたい生産者たちが増え、輸出業務だけを乾燥場業者に依頼するようにもなってきました。

これも時代の流れだと思います。

スペシャルティコーヒーの普及もあって、生産国では乾燥場兼輸出業者も格段に増えました。ロースターやカフェが爆発的に増えたのと同じような動向です。
既にそうした業者の淘汰も始まっているようですが、今から始める業者も増えていますので、需要が高い間は競争が止まらないといった感じです。  

昨年のニカラグア滞在中に新たな生産者達と会い交流が始まりました。Lenny Jimenez もその中の1人で、今から本格的にアフリカンベッドを作って更に品質を上げたいと言われていましたが、先日彼から写真が届き、基礎がだいぶ出来上がって来たようです。
来年のカップオブエクセレンスにも出品するらしくマラカツーラにしょうか、アフリカンブルボンにしようか迷ってるけどどう思う?って感じで教えてくれました。

こういう設備系は本当に費用がかさみます。コンテストで受賞した賞金をそのまま設備に投資する生産者も多く、それだけボーナス的な収入が、銀行から容易に融資を受けれない環境下では設備投資をする上で必要不可欠になっていると感じます。

お付き合いをまだしていない生産者達とも交流が始まりましたので、試験的に2、3年輸入して行きます。コロンビアの生産者ともそういう流れになります。
取引きをしていくうちに量と質の安定供給が可能か否か、お互い安心して信頼し合えるかなど見定めた上で、本格的に買付けを始めるイメージでしょうか。
Lennyさんも熱心な方なので質の向上を図っていただきお付き合いできるようになれたら良いなと思います。

さて、一方でエルサルバドルですが、クツカチャパという同国最大の農協処理場があり、お付き合いのあるフェルナンド・リマさんはここの会社の経営者の一人。

毎年訪問時にはこの処理場にも案内していただきます。
この組合に加入している生産者組合員はここで様々なサービスが受けられます。
ここでは収穫したコーヒーを乾燥させたり、乾燥後の処理輸出作業をしたり、時にはティラピアを育てゲストにランチとしてご馳走してくれたりもします。

コーヒー生産者さんの中でも乾燥処理場を所持している生産者はひと握りですので、設備や敷地を持っていない小規模生産者にとってはなくてはならない存在です。
だいたいの生産者はこうしたドライミル(乾燥場)に収穫したコーヒーチェリーや、パーチメントコーヒーを持ち込み、手数料を支払ってその後の出荷までを委託しているのです。

乾燥処理といってもその方法(アフリカンベッドなのかコンクリートパティオなのか、天日なのか日陰なのかなど)によって仕上がりや手間(=コスト)が大きく変わってきます。

時代によっての変化への対応も常に必要に迫られていますが、今後農家さんがどうシフトしていくのか、見守っていくところであります。