コーヒーを選ぶ際に、ミルトンのお客様は商品説明の風味特徴で選ばれることが多いような気がしますが、実は「処理方法」が大きく味づくりに影響しています。
この「処理方法」には、世界的にその時代のトレンドのようなものが見られます。
処理というとウォッシュド・ナチュラル・ハニーあたりは聞いたことがあるかもしれません。でも、そこから派生して、今や数えきれないほどの処理方法が存在しています。
例えばアナエロビック、アエロビック、カーボニックマセレーション、セミカーボニック、フュージョンコーヒーなどが生産地側ではブームとなっています。
所謂発酵ブームとでも言いましょうか。微生物の分解する力を借りて処理するのですが、まだまだ新しい処理だということは言えますので、どこの農園でも試行錯誤をしているわけです。
発酵と言うと日本ではお酒や味噌、醤油がメジャーですが、麹を使った発酵が一部ではコーヒーにも利用されているそうで、思わず少し違うんじゃないかなと思ってしまいましたがコーヒーに携わるものとして一度は飲んでみたい!
個人的にはプレーンなウォッシュドが好きで、豆の品種そのものの味とテロワールが感じられるところがいいなと思います。
発酵も楽しいのですが、カッピングしていて正直思うのは、もう本来の味どこかいっちゃったよね?といったコーヒーにもぶつかる時があります。
複雑な発酵工程を加えても本来の風味を残すぐらいまでに留めて欲しいなぁと個人的には思う次第です。
さて、アナエロビックとカーボニックマセレーションの違いについて参考までに。
大まかな概要と違いは他のサイトを参考にしてもらうとして、何が決定的に違うかというと、タンク内のチェリーに炭酸で強制的に圧をかけているかどうかです。
チェリーを密閉タンクに入れるところまでは一緒。(稀に皮を剥いた状態で行う人もいる)
外気は取り込まず、発酵過程で出る自然発生する炭酸だけを抜く方法がアナエロビック処理となります。この時炭酸ガスは外に逃すので圧はかかりません。
それに対してカーボニックマセレーションは、炭酸ガスボンベ等を使って強制的に発酵タンク内に圧をかけます。
細かいかけ方や頻度は生産者によるところですが、浸透圧を使って生豆内部にまで発酵の影響を及ぼすように仕向けます。
参考までに炭酸を5気圧で5分間注入し、1日3回かける生産者もいます。ガスでチェリーがぎゅーっと圧縮される形になります。
攪拌出来ないタンクでのカーボニックマセレーションは完成品にばらつきが出てしまいますが、本来は攪拌しながら圧をかけていくのが好ましいようですが、お金もかかります…
肝心の風味ですが、アナエロビックがパンチの効いたナチュラルっぽさが表現出来るのに対して、カーボニックの方が繊細で複雑味が満遍なく浮き出ているようにカッピングすると感じます。
もちろん、カーボニックマセレーションの後、皮を剥かずにナチュラル処理としてアフリカンベッドで天日干しをしても良し。
最後にカーボニックマセレーション処理をどの時点で終わらすかが非常に大事ですが、微生物によってチェリーに含まれる糖分が分解されBrix(糖度)が20%から約10%程度まで下がって行きます。それに伴いphも酸性に傾いていきます。だいたいph 3.5まで進んだ段階でストップすると良いようです。それ以上はフェノールが発生してしまい駄目になるのでお勧めしないそうです。
処理がより複雑になってきているので、ロースター側も覚えるのも大変ですが、何の処理であれ良質な生豆を仕入れることが大事かなと感じます。
カーボニックマセレーションの新しいドアを開いてくれた2022年産地でのカッピング。
これまでカップしてきたどのカーボニックマセレーションよりも、まとまりがあり、風味に全く嫌味がないどころか、クリーンなコーヒーでとてもいい意味で驚かされ、認識がひっくり返りました。
ここの処理場から今年のCOE受賞1位を始め数個輩出されたのも理解できます。
ナチュラルやカーボニックマセレーションが好きなロースターに特におすすめしたいので、引き続き連絡を取り続けようと思います。
彼らのモットーでもある情報の透明性は共感できるところでもあります。
今や世界中の生産地で収穫後の生産処理の多様化は確実に広がっています。
また、驚くべき一例で、収穫後のチェリーをそのまま冷凍し風味の変化を観察するものもあります。生産者が少量ずつ色んな方法を試しながら新しい可能性を探ることは、我々ロースターにとっても興味深いことです。
そして最終的に購入してくださる消費者がどこまでその特徴的な味に興味があるのか、そして毎日飲むコーヒーとして選んでくれるのか、それとも特別な時に飲むコーヒーとして購入してくれるのか。
どちらにせよこの傾向はこのまましばらく続きそうです。個人的にはまだまだウォッシュドの可能性がありそうな気がしています。
今後どのようなトレンドが生まれるのでしょうか..