前回は、セルヒオさんの農園の小屋で過ごした3か月の話を書きました(1回目はこちら)。今回は、セルヒオさんがおいしさをどうやって確かめ、どうやって守ってきたのか、という話です。

セルヒオさんは、自分の農園でとれたコーヒーを、どれがどれか分からないように並べて味見し、一つずつ点数を付けていきます。そして、いちばん点数の高いものだけを残し、それ以外は選びません。自分の農園のコーヒーだからといって、手加減はしないのです。私も農園を訪ねるたびに一緒に味見をしますが、20年続けてきたいまでは、二人の付ける点数がほとんどぴったり合うようになりました。

テーブルを囲むセルヒオさんと息子さん

同じ畑で育った同じ種類のコーヒーでも、摘んだあとの仕上げ方、たとえば発酵させる時間を少し変えるだけで、味の出方が変わります。セルヒオさんはそれを「どっちも良いコーヒー。ただ、味の出方が違うんです」と言います。良い悪いで切り捨てるのではなく、違いとして受け止めたうえで、その年いちばんのものを選ぶ。点数を付けるのは、そのためなのだと思います。

店内の写真の壁の前のセルヒオさんと息子さん

そんなセルヒオさんが、昔、日本に来たときに気づいたことがありました。日本で飲んだ自分のコーヒーが、産地で飲んだときよりもおいしさと鮮度を失っていたのです。そこで彼は、豆をしっかり乾かしてから送るようにしました。ただ、乾かせば豆は軽くなり、重さで決まる売り値は下がってしまいます。周りからは「気が狂ったのか」とまで言われたそうです。それでもセルヒオさんは、自分の取り分よりも、日本のお客様が飲む一杯のおいしさを選んでくれました。

こうした積み重ねの先に、2025年のニカラグアの国際品評会(カップ・オブ・エクセレンス)での2位という結果があります。ミルトンでセルヒオさんのコーヒーを飲んでくださっている方に、その一杯の裏にこういう選択があったことを、少しだけ知っておいてもらえたらうれしいです。

セルヒオさんとミルトンのスタッフ

次回は、農園で働く人たちと、セルヒオさんの息子さんの話を書きます。

ミルトンコーヒーロースタリー 田中大介

MILTON COFFEE ROASTERY

“中南米の生産者を毎年訪ね、
20年以上、直接買い付けています。”

毎年、中南米の農園を訪ね、生産者と一緒にカッピングして豆を選んでいます。
スタッフも産地へ行き、畑や精製の現場を自分たちの目で確かめています。

スペシャルティコーヒーの目安は80点。ミルトンの豆は、そのほとんどが
カップ・オブ・エクセレンスの審査基準で86点を超えます。
価格は国際相場ではなく、生産者が続けていける経費と利益を考えて決めています。
生豆は自社で輸入し、周南市の焙煎所で、豆ごとに
甘さがいちばん出るところまで焙煎しています。