前回は、セルヒオさんが損をしてでもおいしさを守ってきた話を書きました(2回目はこちら)。最終回の今回は、農園で働く人たちと、次の世代の話です。

セルヒオさんの農園では、ふだんは少人数で草刈りや剪定などをまわしていますが、この10月初旬からは、収穫期に向けた機械の整備などのために35人ほどを雇い始めています。12月から始まる収穫の時期には90人ほどが働いています。セルヒオさんは、周りの農園の倍のお給料を払っているそうです。良い仕事をしてくれる人に来てもらえれば、おいしさを保つことができるからです。

それでも去年は人が集まらず、木に実がなっているのに、収穫できたのは半分ほどでした。コーヒーの収入は年に一度ですから、それがそのまま半分になったということです。いま産地でいちばん大きな問題は、天候も変動しすぎて大変ですが、今はそれよりも「働く人がいないこと」なのだと、セルヒオさんは話していました。人材不足は深刻で、ここ数年はどの生産者も口にしています。

トークショーで農園の話をするセルヒオさん

だからこそ、トークショーの最後に彼が言った言葉が、私には重く響きました。

「1杯のコーヒーを飲むときに、何人の人が関わっているかを、思い出してもらえたらうれしいです」

Milton Coffee PLUSの看板の前のセルヒオさん親子

そんな中で、うれしい話もあります。一緒に来てくれた16歳の息子さんは、高校の授業のない週末にコーヒーの学校に通っていて、去年からは焙煎も任されています。私が農園で味見をしていると、自分の焼いた豆がちゃんと焼けているかどうか、横でそわそわしながら見ていました。来年学校を卒業したら英語を学んで、そのあとミルトンで何か月か働いてみたいと話してくれています。もっとも本人は英語より日本語に夢中で、もうすでに少し日本語で話せるようになっていました。

今回の旅で、息子さんはこう言っていました。

「日本に来て、父のコーヒーを飲んでいる本当のお客様に会えた」

ミルトン本店の看板の前のセルヒオさん親子

20年前、セルヒオさんのお父さんの代から始まったつきあいが、こうして息子さんの代へとつながっていきます。トークショーに来てくださった皆さんこそ、息子さんの言う「本当のお客様」です。これからも、セルヒオさんたちが心をこめて作ったコーヒーを、大切にお届けしていきます。

セルヒオさんと息子さん、ミルトンのスタッフ

ミルトンコーヒーロースタリー 田中大介

MILTON COFFEE ROASTERY

“中南米の生産者を毎年訪ね、
20年以上、直接買い付けています。”

毎年、中南米の農園を訪ね、生産者と一緒にカッピングして豆を選んでいます。
スタッフも産地へ行き、畑や精製の現場を自分たちの目で確かめています。

スペシャルティコーヒーの目安は80点。ミルトンの豆は、そのほとんどが
カップ・オブ・エクセレンスの審査基準で86点を超えます。
価格は国際相場ではなく、生産者が続けていける経費と利益を考えて決めています。
生豆は自社で輸入し、周南市の焙煎所で、豆ごとに
甘さがいちばん出るところまで焙煎しています。